【遊ぼうのシグナル】プレイバウ

ワンッ!!

ちょっと、ウェルビー!!
いきなりなに?

アンジー、ウェルビーが「遊ぼう!」って言ってるよ

そうなの?どうしてわかるの?

ほら、前かがみでお尻を高く上げているでしょう。
あのポーズは「プレイバウ」と言ってね、犬が遊びに誘う典型的なシグナルなんだよ。

でも、ワンワン吠えてるよ?

ポーズと一緒に吠えることもあるんだ。
“吠え”は決して警戒しているとか、敵意があるときにだけするものではないんだ。その時々に合わせていろんな意味があるんだ。

そんなのどっちかわからないじゃない?

前後の状況、少し難しい言葉で言えば、
コンテキスト、つまり文脈が大事なんだよ。

目の前で「泣いている」人がいても、
悔しいのか、嬉しいのか、それとも悲しいのか、その人の感情はそれ以外の情報がなければわからないよね?

どうして泣いているの?と聞けば良いじゃない

人間同士なら会話して状況を確認することができるけれど、
犬に人間のような複雑な言語があるようには思えない。
だから、誰にでも伝わるような、わかりやすいポーズが作られたのではないか?と考えられているんだ

なるほど、それが「プレイバウ」なのね

そういうこと。だから、基本的にはプレイバウは「遊ぼう」という気持ちを伝えてくれているんだよ。吠えは興奮の程度、と言ったところかな。

ワンッ(もう、早く遊ぼうよ!!)

目次

『遊ぼう!』のサイン “プレイバウ”

犬たちは、意思疎通を図るために身体全体を使ったシグナルを使います
その中で最も有名な遊びのシグナル「プレイバウ」です。

ご存知の方も多いと思いますが、タイトル写真にもあるあのポーズのことです。

動物行動学者マークべコフさんの説明をお借りすると、
「前肢をしゃがみ込み、後ろ足で立ったまま、尻尾を振って、吠える」姿勢ということになります

PLAY(遊び)
BOW(弓)

弓のような形に見えるかと言われれば、見えるかもしれません。

科学的な観察から、色んな意味を持つことがわかっていますが、
飼い主さんが、まず最初に理解しておきたいのが、

「遊ぼう」

という遊びに誘うサインであるという点です。

『遊ぼう!』だけじゃない

実は、プレイバウには遊びを勧誘する以外にも、さまざまな意味があることがわかっています。
それが次のものです。

「遊ぼう」以外の意味
  • 「ごめんなさい」
  • 「ちょっとやりすぎた」
  • 「いまからの行動は遊びだよ、本気じゃないよ」
  • 「もう少し遊ぼうよ」

これらの行動に共通するのは、

『遊びを維持させたい』

という気持ちです

遺伝子に刻まれたポーズ

プレイバウのポーズは いつ・誰に 教わるのでしょうか?

母親犬?兄弟犬?

実は誰かに教わるものではありません。
遺伝的に継承されているものです。

これは生まれつき盲目の犬社会的に孤立して成長した犬であっても
プレイバウをするということから明らかになっています。

つまり、プレイバウは、遺伝子に刻んでまで継承する必要があるほど
犬にとって重要なコミュニケーションツールということと考えられます。

ステレオタイプでなくてはならない

プレイバウはチワワでも、プードルでも、ボーダーコリーでも、ゴールデンレトリーバーでも同じポーズです。
つまり個性のないステレオタイプなポーズなわけです。

ステレオタイプと聞くと頭がかたい、といったイメージで
ややもするとネガティブな印象すら受ける言葉ではないでしょうか。

人間のように高度に発達した言語を持たない(と現時点では考えられている)
犬たちですが、一方で社会性の非常に高い動物でもあります。

その彼らにとって、誤解されずに明確な意思を伝えることは大切なことです。

人間のように、怪我したらちょっとお医者さんにみてもらおうというわけにはいきません。
ちょっとの怪我が生死に影響を及ぼす可能性が出てくるため、遊びと本気はしっかりと区別される必要があります。

そのために、わかりやすいポーズ、が採用されていると考えられています。
そのような理由からプレイバウは、犬種や雌雄、年齢によらずステレオタイプなポーズでなくてはならないのです。

0.3秒を見逃さない

ここでプレイバウについての豆知識をひとつ。
次のような実験データがあります。

プレイバウの継続時間

コヨーテ:0.31秒
オオカミ:0.38秒
ビーグル:0.33秒

多少の違いはあるものの、イヌ科のプレイバウ時間は、ざっくり0.3秒です。

少しイメージしやすくすると、人間のまばたきは0.1秒程度だそうです。

まばたきを3回してみてください。
それがプレイバウの時間です

まとめ

プレイバウの基本
  1. 「遊ぼう」のシグナル
  2. 「ごめんね」「やりすぎた」「今からのは遊びのだよ、本気じゃないよ」などの意味も持つ
  3. 犬が成長して覚えるものでなく、生まれ持って知っているポーズ
  4. 犬種に関係なく同じポーズ
  5. 0.3秒程の短い時間

犬の「遊ぼう」のシグナルであるプレイバウ。

愛犬が他の犬や、あなたに向けてプレイバウをしていれば、それはその犬やあなたのことを「遊び相手」として
選んでいるということです。
愛犬のプレイバウを見逃さずに、一緒に遊べたらもっとベターな暮らしになるのではないでしょうか?

参考文献

Canine Play Behavior -The Science of Dogs At Play Kaufer, Mechtild(2014)
愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話 マーク・べコフ(2019)
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